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シルバー民主主義の政治経済学            島澤諭   

 高齢化社会において高齢者だけでなく子育て世代にも政治が訴求する理由

 

①罠に陥ったのは日本だけか?

シルバー民主主義 中位年齢の高齢化や数的優位を背景として政策決定権を握った高齢者が優遇政治を実現

シルバーファースト現象 政治が再配分の規模と期待できる得票数を世代的に比較衡量した上で優遇政治を選択

 

中位投票者の定理によれば、日本の政策の決定権を持つのは還暦世代

 =中位投票者モデル 過半数の支持が得られる政策を分かっている

 先進国の多くが、シルバー優遇政治の罠に陥っている=デフレを好む 圧力団体、イデオロギーから世代へ

 

②本当にシルバー民主主義なのか?

民意は熟議や討議を経て利害関係者が納得したうえで集約されるのが理想的であるが、

実際には多様な民意の中から投票プロセスを経て選び取られた民意が他の民意を抑える形

高齢化の進行は高齢者の政治的影響を高め、シルバー優遇政治のエンジンとなる

日本の高齢者は若者との比較では優遇されているが、旧民主党政権以降若者向け給付も増加してきている

=確率的投票者モデル 各世代集団から得られる限界的票数が等しくなるように政策決定 母集団が大きいと一人当たりの配分が減り訴求が弱まるので高齢者よりも若者の方に配分する方が訴求しやすい

 

③世代間対立は真実なのか?

政府財政と社会保障制度は財政赤字ファイナンスによってリンク

現在世代は暗黙裡に結託しつつ将来世代の財布に手を出している

→消費税よりも所得税を選好

高齢世代と現役世代の格差は存在するが、現役世代と将来世代の間の格差の方が大きい

目に見えない債務額は926兆円 将来世代の生活は実質的に生まれる前から立ちゆかな

社会保障制度の自己破壊性 一旦導入されると少子化を進行させ、政治過程を介した過大給付をもたらすため、

支え手の生活を危うくし、将来の支え手を減少させ、自らの存立基盤を破壊していく

 

④政府財政・社会保障制度の改革を阻む俗説

 

シルバー優遇政治だけでなく非合理性の三要因

①将来予測の不可能性 ←独立財政機関を設置し、将来予測ではなくシナリオ分析への転換が効果的

有権者間での意思疎通の不能 ←政策当局の徹底的情報開示による有権者間での認識のすり合わせが効果的

③利害関係者の非合理性 ←改革先送りのコストの定量的な提示が効果的

改革を阻んでいるのは財政赤字ファイナンスを続けたい高齢者・現役世代・政治の鉄のトライアングル

 バラマキが公共事業から社会保障へ ゼロ金利による金利ボーナスが財政環境の危機を見えなくしている

 

⑤民意の高齢化は続くのか?

高齢者の政治に対する影響力は増大する一方 更に一票の格差は地方の高齢者の政治的影響力を振幅

投票率に対する世代効果は、世代が若くなるほど小さくなっていて、更に高齢者の影響力が増大 投票には社会経験が必要

 

⑥何がシルバー優遇政治を生み出したのか?

選挙制度改革と行政改革が民意重視、民意依存の政治のお膳立て

小選挙区制は民意を拡大して議席数に変換する装置であり、民意重視の政治を生む

 新たなイデオロギーの対立軸を生み出せず、国士型政治化の消滅

支持政党のある者の民意は高齢化 無党派層の民意は若い

 財政赤字ファイナンスと相まって、シルバー優遇と非高齢世代重視の政治が併存し、結託して将来世代に請求書を回す

 

⑦脱却できるのか?

日本の大前提 ①現在の政府財政・社会保障制度は右肩上がりの経済、人口、貧しい高齢者、豊かになる若者が前提。

②現実は、経済・人口は右肩下がりで、高齢者は豊かになり、若者は貧しくなっている。

③政治は豊かになる高齢者の既得権に手をつけず、そのうえで貧しくなる若者への分配を増やす方向。

④それを可能にしているのが財政赤字ファイナンスで、その結果が世代間格差となって表れている。

=給付減、負担減という痛みを逃げるため現状維持

民主主義の生物的限界 時間選好率が高齢化とともに上昇する

社会保障制度依存可能性に対する主観確率の世代間ギャップ 逃げ切り

財政の持続可能性を回復させるには財政赤字ファイナンスを即時停止するしかないが、世代間戦争を引き起こす危険性

シルバー優遇政治を超克するには民意の尊重と民意の遮断を調和させる制度が必要

高齢世代の高い利他心に働きかける②民意の高齢化の是正③民意の遮断④年齢にかかわらず困窮度に応じた給付

 

基本方針

財政赤字を止めよ! 現在世代が使うお金は現在世代が賄う

②現在の年齢別受益負担構造を見直すことで若者への分配を増やせ!

現在世代の負担の範囲内で若者への分配を増やし経済・社会の持続可能性を高め、将来世代への先送りを発生させない

③世代間戦争は絶対に避けよ! 無用な対立は改革のコストを吊り上げ、改革が不可能になる

 

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