感情の政治学 吉田徹

政治は、正しいことを言ったり、政策として採用したりすれば、そのまま正しい結果が生まれるとは限らない。これは正しい、正しくなく、ということ自体が、政治的行為にほかならず、新たな賛成反対の声を巻き起こす自己言及的性格を持つ。

個人が自らの選好があらかじめ規定されていて、そのうえで合理的な政治的判断を下すわけではなく、私的な感情、象徴、政治的指導者との関係や相互作用といった情念によって考えや行動が形作られている。

共同体にコミットする活動は、「利益-コスト」モデルに還元されるものでも、賞賛の対象として崇められるべきものでもなく、情的な結合を基礎とする関係性からくる非合理を前提にしなければ担保できない。

 アマルティアン=セン 潜在能力アプローチ 人びとの利益とは社会的なものから切り離されるべきではない。人びとにとって何が必要であるかは、個人の選好から測られるべきものではなく、社会のなかに生きる個人にとって何が欠損しているのかという観点から測られるべきものだ。自分と他人が何を得られるかではなく、自分と他人が何を必要としているのか、をスタート地点にして社会を構築していこう。

政治における道徳とは、個人の目的から逆算して何が正しい選択であるのかを合理的に思考する「利益-コスト」と「有用性」の連鎖のなかにではなく、他人とともに、他人のなかで行動するところから生まれてくる。

人びとはまず自分以外の存在と関係を築き上げ、その関係を維持する場を生産していくことでしか、自らの欲するものを手に入れることはできない。 

 消費者的投票 社会の個人化 政治と人間との間には統合と対立の景気が埋め込まれている

 投票を棄権するのが合理的な判断 社会や他人との関係性から投票

 恩顧主義 感情を基盤とする共同体の一体性を醸成

→他者との物質的なものだけでなく諸運や自尊心の調達を動機として関わる交換からなる関係性

 群衆から公衆へ 目標の追求と獲得が渾然一体

 集団行為に参加すること自体に喜びと満足を見出す

 食べるという行為が食事という行為と満腹になることで得られる安寧が切り離せないものであるように、目的であると同時に手段でもある

 予見可能性を奪われるという恐怖に対する恐れこそが自由主義の拠って立つ根拠 恐怖が生存の価値を高める

 情念を踏まえた政治が自律的で相互協力的な行動を生み出す アイヒマン

 コミットメント問題 相手が自分を裏切らないという確実性を相手との約束事を作ることで作り出す恐怖によらない政治が存在し得るのか 原罪

 他人についての情報を十分に持たないなかでの予測可能性

 合理性は信頼を代替しない 合成の誤謬

 他者を信頼しないというのは高度化複雑化した社会のなかでは非効率であるばかりか思わぬリスクを抱えることになる

 垂直的信頼 私たちの代表である政治家や政党が十分な働きをしていない(民主政が共同体の期待水準に追い付いていない)民主政そのものへの不信ではない

 水平的信頼 再配分の基礎となるのは他人との信頼関係

 無私が信頼を生む 他人の自由が増えることは自分の自由が減ることを意味しない、他人を信頼することで自分の自由が拡大していくような社会がつくりだされていかなければならない。