サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か  PHYSICS OF THE IMPOSSIBLE

‘08日本放送出版協会 ミチオ・カク

 

SFに登場するものがどの程度実現に近づいているか、そのいろいろなアプローチも紹介されていて面白い。

 

不可能性レベルⅠ 現時点では不可能だが、既知の物理法則には反していないテクノロジー

フォース・フィールド

①ⅰプラズマ・ウィンドウ プラズマは電場や磁場で成形できる 真空と空気を分け隔てるのにも使える

 ⅱレーザーのカーテン

 ⅲカーボンナノチューブでできた格子[NEC飯島隆男]

 ⅳフォトクロマティクス ⅰⅱⅲでは透明のためレーザー光線が透過するので、紫外線が当たると着色する光色性を備える

②磁気浮上 重力に逆らう 高温超電導体 マイスナー効果 鏡像の磁石 水も反磁性体 磁性材料の超伝導磁石で常磁体、反磁性体も浮揚させられる

 

不可視化 透明性は原子レベルで生じる性質

メタマテリアル 屈折率を操作する cf蜃気楼 マイクロ波だけでなく可視光にまで拡張するのは困難 緑色500nmに対して50nmの構造[デューク大]

フォトリソグラフィー・フォトニック結晶 負の屈折率 ガラス基板に銀の薄膜しフッ化マグネシウムをコートして銀の薄膜に格子状にエッチング 屈折率‐0.6 100nm

 780nmの赤色には成功[ニームズ研究所 コスタス・ソウコウリス]

→可視光域で使えるレンズ開発

→光によるコンピュータチップ 熱損失が少ない

③プラズモニクス 緑色領域に負の屈折率 光を圧縮[カリフォルニア工科大 アンリ・レゼ他]

課題 三次元方向に光を曲げる、複数新同僚数領域の光を曲げる、シールドがかさばる、シールドの中から外が見えない 鍵はナノテクノロジー 走査型トンネル顕微鏡

[IBM ゲルト・ビニッヒ、ハインリッヒ・ローラー]

光学迷彩 ホログラム すべての波が同期して振動している(コヒーレント)[東大 川上直樹]

⑤四次元の力を使う

 

フェイザーデス・スター

レーザー アルキメデス 集光

課題 携帯式小型動力装置と安定性の高いレーザー発生物質

ライトセーバー 光を固める+光を途中で途絶えさせる プラズマを使う 

デススター 核融合

①慣性閉じ込め レーザー光を集約 莫大なエネルギーを集約しムラなく照射することが困難[NIF]

②磁気閉じ込め 高温の水素ガスのプラズマ 磁場があるため均一の圧縮が困難[ITER]

水素爆弾 X線波長領域で莫大なエネルギー 重水素化リチウムを並べると連鎖

④核爆発型X線レーザー 何千基

ガンマ線バースター 超新星爆発後のブラックホールから放射されるジェット →不可能レベルⅡ

 

テレポーテーション

量子テレポーテーション EPR実験 光よりも速く伝わるが、ランダムでない情報を含む信号は送れない→光子→原子 原子のからみ合いを利用 原子の情報が移る[ブラッドリー]

ボース・アインシュタイン凝縮BEC 絶対零度付近では全原子が同期して振動しスーパーアトムのようになる→量子コンピューター 複雑な分子、有機分子は難しい

ウイルス、細胞はともかく人間は不可能レベルⅡ

 

テレパシー 超感覚的知覚ESP おおまかならば不可能レベルⅠ

①脳スキャン 脳の電気信号は微弱mWで不規則、受信能力がない、受信できても解読できない

②fMRI機能的磁気共鳴画像法 何分の一秒の間、1㎜の範囲に照準 生体脳の思考パターンを描く

[ペンシルヴァニア大ダニエル・ラングリーベン]

嘘発見器←嘘そのものではなく、嘘をつくときに高まる脳の活動

思考の辞書 パターン認識ニューラルネットワーク 脳の広範囲に分散

ユニバーサル・トランスレーター                [カーネギーメロン大マーセルAジャスト トム・ミッチェル]

課題 巨大な磁石、被験者と外部ノイズの遮断、

→携帯化 原子磁力計 ヘリウムガスに気化したカリウムを浮遊させる

[ブリスベン大イーゴリ・サヴコフ マイケル・ロマリス]

思考を送る 特定機能を司る脳の部位に電磁気信号を送り込む[サドベリー研究所マイケル・パーシンジャー]  脳の地図[マイクロソフト創立メンバー ポール・アレン]

 

念力

重力はひきつけるだけ

電磁力は中性の物体を押すことはできない

核力は短距離だけ

エネルギー供給 体では5分の1馬力 エネルギー保存則

A電子センサーを心で操作

①脳波パターン 生体フィードバック 思考によるタイピング 脳波をコントロール[チュービンゲン大]

②脳に直接埋め込む ブレインゲート[ブラウン大ジョン・ドノヒュー]

B動かす 常温超伝導体 マイスナー効果

C変形させる ナノ工場 資材(アミノ酸)、道具(リボソーム)、設計図(DNA分子)

①大量のナノロボットに、レーザー光で信号を送り、原子を切断し、並べ替える

②パーソナル・ファブリケーターというレプリケーター [MITニール・ガーシェンフェルド]

③ナノ・リソグラフィー 走査型プローブ顕微鏡SPM 原子ひとつずつだと時間がかかる

[カリフォルニア大アリスティデス・レキチャ]

 

ロボット

AI トップダウン方式 パターン認識、常識の欠如 

 ボトムアップ方式 ニューラル・ネットワーク

感情 進化の副産物→ロボットも自分を守りたい、目標を決め自らの生に意味と形を与えるために必要となる

意識 思考や情報処理が人間と異なる可能性

統語論と意味論の違いが曖昧化すれば、質問を理解しているかどうかは無意味

危険な存在? サルの知能で危険 インフラのAI ←炭素とシリコンのテクノロジーの融合

 

地球外生命とUFO

A 生命探査 ドレイクの方程式

 水を追う 水は万能溶媒でいたるところで見つかる

 炭素は結合の手が4本あり、複雑な分子をつくることができる

 DNAのような自己複製する分子

①自ら光を発しないので母星のふらつきをとらえる=巨大で動きの早い惑星しか検出できない

 →母星の光の変化をとらえる

②SETI地球外知的生命探査 通信傍受 1~10GHのマイクロ波放射を聴く 水素ガスの放射する周波数1.420GHを選択

←レーザーが使われている可能性=波長が短いので多くの情報を積み込める=指向性があり周波数がひとつなので受信が困難 圧縮、分散等されていれば単なるノイズとしてしか検知できない

ゴルティロックス・ゾーン外側 ドレイクの方程式より多い 木星衛生エウロパに液体の水

ゴルティロックス・ゾーン内側 ドレイクの方程式より少ない

地球 木星サイズの星がなければ彗星や小惑星を弾くことができず生命は存在できない

比較的大きな月のおかげで地軸が安定

  スノーボールアース=何度も絶滅の危機 人間の遺伝子はほとんどそっくり=クローン 強い磁場

ほどほどの自転速度 銀河からちょうどより距離=放射線

③知的生命 ⅰ感知機構ⅱ物をつかむⅲコミュニケーション手段+軍拡競争

 自然はありとあらゆる姿かたちを実験した

 捕食者の方が賢い→立体視する目

スケールの法則 体重と体積→強度、呼吸 熱損失(表面積)と熱量(体積)→暖かい方が体が大きい

考えられる文明発展段階[ニコライ・カルダジョフ]

〇死んだ植物を機械の燃料にしている 地球

①降り注ぐ太陽光線を利用して惑星全体のエネルギーを取り込む

②太陽の全エネルギーを利用できる ①の1000倍 ほかの恒星系に移住できる、住んでいる惑星を動かすことができる

③銀河全体のエネルギーを利用できる ②の100億倍 ブラックホールのエネルギーも利用でき、銀河内を自由に飛び回れる

→地球を訪ねたり征服したりしようとはしない(=生命のない惑星が無数に存在する)が邪魔なので除去されたりする可能性はある 蟻塚?

〇から①への移行の前に文明が自滅する可能性

B UFO 特徴:空中でジグザグ動く、停電になったりエンジンがかからなくなったり、音もしない

 g力は地球の重力の100倍を超える→無人or半分機械

 モノポール(時期単極子)地球では見つかっていないが、理論上ビッグバンの瞬間にはたくさんあり、宇宙旅行できる種族なら回収できてもおかしくない

 巨大な推進機構がない←月にナノテク基地があり、ナノテクノロジー無人で自動操縦のナノシップを飛ばす

 

スターシップ 人類が生き残るには、いつか太陽系から近くの星へ逃げ出さなければならない

αケンタウリの恒星系でも4光年以上 現在のロケットは時速6.4万kmでは7万年

A ロケット 莫大な燃料、長い時間

①化学燃料 燃焼時間が数分 個体燃料 250秒 液体燃料 450秒

イオンエンジン 推力が弱すぎるが真空中でも駆動できる 3000秒

太陽帆 直径数百km、月から何千基のレーザーで数十年放射→光速の半分程度の速さ スイングバイで戻る

核融合ラムジェット 直径160㎞の漏斗で1Gの加速度の核融合のための水素ガスをかき集められる 1年で高速の77%の速度 時間の進み方が遅くなるので11年で400光年離れたプレアデス星団に到着 ←存在量の少ない重水素三重水素核融合はできるが、存在量の多い陽子-陽子核融合には成功していないし、生じるエネルギー量も少ない

原子力ロケット 核爆弾と化す可能性 ティンバーウィンド計画

 核分裂 800~1000秒 核融合 2500~20万秒

⑤核パルス推進ロケット 複数小型核爆弾 オリオン計画 冥王星まで1年で往復、一番近い恒星に44年 1000個以上の水素爆弾、重さ800万t、400m 放射能汚染 1~100万秒

B 最初の160㎞の重力を振り切るために大半のコストがかかっている

①宇宙エレベータ 高度3.6万㎞の衛星を地上に固定 60~100Gパスカルの張力 鋼線は2Gパスカル

 カーボンナノチューブは120Gパスカルに耐えるが現在はせいぜい15mmの長さ

 1個でも原子の位置が狂うと強度が30%低下 ケーブルの人工衛星や隕石からのシールドが必要

②太陽を活用したスイングバイ 止まっている星からはエネルギーを獲得できない 

③レールガン 電磁力を利用 衝撃波の速度の制約を受けない 空気との衝突←月に設置

太陽から地球までの2/3のレールで5000G

C 船 無重力←回転して遠心力による人工重力

隕石に対して特別なシールドが必要

放射線対策が必要

D 長時間の旅行に対し仮死状態にする 低体温 不凍液 血液を抜き、冷たい溶液を注入、硫化水素混合空気

E ナノシップ イオンは軽いので、光速近くまで簡単に加速でき、摩擦がないので慣性で進む

 安価なので量産できる コーラ缶サイズ

  どこかの衛星に着陸して自己複製することで銀河系税対に広げられる

   ナノ粒子を噴射すればイオンエンジンと同じ利点を持ちながらはるかに大きな推力

[ミシガン大ブライアン・デルクリスト]

反物質ロケット 100万~1000万秒[ペンシルヴァニア大ジェラルド・スミス]

 

反物質と反宇宙 ダ・ヴィンチ・コード イルミナティ

反電子、反陽子、反水素の作成に成功[ERN] 物質と接触すると爆発

→イオン化して磁気瓶に閉じ込める

 反電子4㎎で数週間で火星、30㎎で冥王星、7gでαケンタウリまで飛ばせる 10億倍のエネルギー

 作るのが大変なら宇宙から捕獲 cp対称性の破れにより、物質と反物質の不均衡から反物質のたまり場があるはず 16㎞の正に帯電している球で反陽子を引き寄せ、100mの球で止めて磁気瓶に閉じ込め、反電子と結び付け反水素をつくる 金星と火星の間に80gの反物質

[エンチバー・ラルジーズ ジェラルド・ジャクソン]

E=±mc2 [ディラック] シュレーディンガー方程式を修正 物質と反物質の解 スピンを予言

反重力 重力と同じもの 反物質は重力のもとでは上昇せず落下するはず

反宇宙 CP反転宇宙がありうるとすればビッグバンで100%の対消滅が起こり原子が存在しえない

→CPT反転宇宙 電荷パリティ、時間の進行を反転させると、すべての物理法則に従う 交信不能

 原子未満の粒子はT反転可能 量子論ではT反転だけは不可能だが、CPT反転は成立

 

不可能性レベルⅡ 物理世界に対するわれわれの理解の辺縁にかろうじて位置するようなカテゴリー

光より速く

一般相対性理論

A空間を引き伸ばす 後方を引き伸ばし、前方を縮める アルクビュレ・ドライブ

→負の物質 実在するとしても無よりも軽いので深宇宙でしか見つからないだろう 重力レンズ

負のエネルギーは実在するが量がわずか

B空間を切り裂く 二点間をつなげる シュヴァルツシルトの解 ワームホール

課題 ブラックホールは往来不可能、つぶされる←負のエネルギー、負の質量による反発力で可能

  1mのワームホール木星の質量に匹敵する負のエネルギーが必要 不安定 青方偏移による放射          線

                                                                                                                  [ワシントン大マット・ヴィサー]

航跡場卓上型加速器 現在1m2000億Vの加速→プランクエネルギーの加速に必要な長さは10光年

                                                                                                                             [ILC、SLAC等]

 

 

タイム・トラベル チャールズ・ディケンズクリスマス・キャロル

[ホーキング]未来からの観光客が今いないbut不可能な法則がみつからない

ワームホールを利用←片道切符 さかのぼれるのはタイムマシンがつくられた時点まで[リチャード・ゴット]

回転する宇宙[クルト・ゲーデル]←宇宙の実質的な回転はゼロ

無限に長い回転する柱のまわりを回る[ファン・ストックム]←物質はばらばらになってしまう

タイムパラドックス

 ①過去の歴史を繰り返すだけ 最初のアイデアの出どころはわからない

 ②自由意思に制約 ターミネーター

③宇宙が分かれる バック・トゥー・ザ・フューチャー

万物理論でしか事象の地平線の物理学を把握できない

 

並行宇宙 

①超空間、高次元 ひも理論から予言[リーマン]

[サルバドール・ダリ磔刑 超立方体」「記憶の固執」][マルセル・デュシャン「会談を降りる裸体」]

[オスカー・ワイルド「カンタヴィルの幽霊」]

マルチバース ひも理論から予言 自然定数が生命の存在を許すように調整されている

 人間原理[ケンブリッジ大サー・マーティン・リース]

量子論的並行宇宙 原子の確率論的世界と人間の世界とを隔てる見えない壁 宇宙は電子より小さかったのだとしたら、宇宙も並行な状態で存在する

無から生まれた ベビーユニバース

①正電荷負電荷の総和はゼロ②宇宙の回転はゼロ③宇宙の物質-エネルギー総量がゼロかもしれない理由

プランクエネルギーのレベルで時空が不安定になり、宇宙を抜け出せる可能性

何がインフレーションをはじめさせ、なぜとまったのか

→500kt級核爆弾の爆発程度でも宇宙は誕生する?

→ベビーユニバースは、モノポールは質量が大きいのでエネルギーを注入すれば膨張する

コンタクトできるのか 干渉性を失っている

基本定数を宇宙のDNAとみなせば、宇宙は進化し、適者生存[リー・スモーリンのアイデア エドワード・ハリソン] ←検証不能

 

不可能性レベルⅢ 既知の物理法則に反するテクノロジー

永久機関 物理 ⇔錬金術 化学

①無からは何も得られない②収支とんとんにはできない③ゲームからは抜けられない

第一種永久機関 消費する以上のエネルギーを生み出す

第二種永久機関 エントロピーが増大しない

系が対称性をもつなら結果的にそれは保存則になる 宇宙の法則が時間の推移に対して不変なら、結果的に系のエネルギーは保存される[エミー・ネーダー]→エネルギー保存則は約10億年は持ちこたえられる

宇宙の73%がダークエネルギーという真空のエネルギー 総量は天文学的だが地球上にはきわめて少ない 物理基本法則の見直しが必要[ニコラ・テスラ]

 

予知能力

因果律 ニュートンの理論では予知能力が入り込む余地がない

 マクスウェルの理論では先進波が時間をさかのぼる=反物質の動き

[ファインマン] ディテック方程式 同じ電子が時間をジグザグ行き来している?

 数学的な操作だけで、物理的現象はそのまま 同じ過去を繰り返す=因果律を破らない

タキオン 光より早く動く 虚数の質量 エネルギーを失うたびに加速 虚数の質量ビッグバン以前の宇宙に存在し、今はもう存在しない→ヒッグス・ボゾンという通常の粒子になった

 

万物理論

検証不能

 科学は間接的ex太陽の成分の水素はスペクトルから判断している

やがて検証可能にex原子

不可能

 自己言及[ジョン・バロウ] ゲーデルの不可能性定理

 北極のない地図[スティーブン・ワインバーグ]北極がわからない頃でも磁石で航海できていた