「接続性」の地政学 グローバリズムの先にある世界 CONNECTOGRAPHY mapping the future of global civilization

パラグ・カンナ’77インド生、世界経済フォーラム「若き世界のリーダー」(‘16)’17原書房

 

中国、中東、アフリカなどの地域の展望が興味深い。市場とか資源とか宗教とかで焦点があたることが多い地域に新たな視点が得られる。

 

過去の著作

「「三つの帝国」の時代」2009 複数の超大国が不安定さと分裂の問題を抱える主要地域で影響拡大を競う 国は買われている 同盟関係をこれ以上強めないままに最大限の恩恵にあずかろう

ネクスト・ルネサンス」2011 政府、企業、市民団体その他の組織が権力を争いながらも共同関係を結び世界規模の課題に取り組む 新たな中世時代 自発的な接続性を通じて世界を自由化する

本書の着眼点

①接続性が分割に取って代わった 政治的な境界よりも機能的なインフラ

②権限移譲 地方や都市へ権限が分散され、一方、存続し続けるために共同体へ融合

地政学的な競争の性質が、領土をめぐる争いから接続性をめぐる争いへ

 異なる体制間の戦争が、単一のサプライチェーン体制内での戦争に移行

接続性

幹線道路6400万㎞ パイプライン200万㎞ 鉄道120万㎞ 海底ケーブル75万㎞ > 国境線25万㎞

サプライチェーンは地理という監獄からの脱出 何もないところに経済的発展の機会を生み出す場

 気候、土壌などで好条件に恵まれなかった土地にアイディア、テクノロジー、ビジネスの手法をもたらす存在

 地理に定められた運命を接続性によって新たにすることができる

誰が土地を所有しているか、よりも、誰がその土地を利用しているかの方が重要

物理学 複雑性+流れと摩擦

メトカーフの法則 結節点の数が増えるにつれ、ネットワーク自体の力が急激に大きくなる

流れ 資源、商品、資本、テクノロジー、人、データ、アイディアなど

摩擦 国境線、紛争、制裁、距離、規制など 運動が完成に打ち勝つ

 

新たな凡例 行政区画だけでなく権力をもつ集合体としての接続性も示す

Country 法律サプライチェーンに運営される 上の国家ではなく実際に権力をもつ集合体

City 自力で運営している 最も安定

Commonwealth 互いの能力を融合し、協調行動を計画

Community 国境を持たない 個人のアイデンティティと忠誠心 移民

Company 政府より強い力を持つ

10億人の貧困に苦しむ人々 社会から切り離されている場合には無視できるが、世界経済とつながると真剣に受け止められる

 

権限移譲                                                                                                                                  

政治は民主主義ではなく権限移譲に向かう  主権は内側から解体されている

民主主義は選挙を最優先 権限移譲は政治的な安定のための境界線を定める

理想の世界

①地理的に一体化していて(輸送負担を回避)

②500万人から2000万人程度の人口を抱え(域内市場規模を確保)、

③他の都市や近隣国との堅固なつながりを確保している機能的かつ人口の多い都市をいくつも擁し、

さまざまな天然資源を入手でき、財産権を保護して法の原則を遵守するための責任を果たす効率的な統治を行える

シンガポール、スイス、イスラエル、UAE

エストニアスロヴェニアウルグアイ 人口は少ないが

レバノンボスニア これ以上分割するには狭い

 

集約

権限移譲はアイデンティティ、都市化、財政の透明性等を原動力とするが、

逆の集約もインフラの接続性、経済的統合、労働移住、政治的和解を動因として進展している

暴力的な分離から機能的な共同体への統合という流れ

インドの平和

東南アジアの平和 大メコン圏 アメリカの面積の1/3 GDP一兆ドル

アフリカの平和 中国がつながりをつくり共同して所有するひとつのシステムへと融合させ、魅力ある地域へと変化

アラビアの平和 GCC ヨーロッパ、アジア、アフリカの結節点として重要な地位を占める可能性はある

アメリカ コモンズの悲劇、中国からの移民

グリーンランドは気候変動によって生まれる初の国家 アメリカ連合に加わる

接続性の優位性

 オーウェル 1984 先見の明? オセアニアイースタシア、ユーラシア 協力と競争

 ベケット ゴドーを待ちながら 第三次世界大戦は来ない

水平(資源の重商主義 量)+垂直(革新の重商主義 価値)=右肩上がり

もっともつながっているものが勝つ

クラゼヴィッツ 戦争とは他の手段による政治の継続

 サプライチェーンの分断を通じて兵器化できるが、相手国で活動している自国の企業に打撃を与え、犠牲が大きい

マチュアは戦略を語り、プロフェッショナルは兵站を語る

戦略地政学的駆け引きは、イデオロギーではなく資源やインフラの優先的利用の約束

「安全保障」だけでなく「接続性」「インフラ」も同等に最も重要な世界の公共財になった

制裁措置(イデオロギー 道徳)よりも接続性(費用便益計算 現実)の方が、和解、譲歩、共存が生まれやすい

 中国 モンゴル、シベリアカザフスタンアフガニスタン、イラン、アフリカ、

ピレウスギリシアスエズを抜けてすぐにヨーロッパで陸揚げ、

羅先(北朝鮮北極海航路 レアメタル・水力・市民は勤勉

←ブローバック 指示していた国が急に敵対的になること が始まっている

サプライチェーンが軍事的な様相を帯びるのは避けられない →実際の争い

エネルギーとテクノロジーの融合で自給自足を達成したら、グローバリゼーションはより縦断的なものになる(風力発電、シェール革命、海洋資源等)

借りることはできても買うことはできない                      

鉄道の建設や英語の普及だけで帝国が維持できるのなら、イギリスによるインド支配はまだ続いている

飛び地の帝国

中国は香港、マカオなど租借地としてヨーロッパに支配され、運営方法を学ぶことができた→トリニダード・ドバゴ

アメリカだけがシーレーンを分断する力を持っている現状で、中国も武装艦を派遣するのか?

中国の南シナ海における軍事行動は、マラッカ海峡への依存を減らすため

クラ運河はシンガポールマラッカ海峡を物流から切り離してしまう

 タイ南部のイスラムの独立と関連 チリ・バルパライソパナマ運河開通により衰退

陸路での中国からパキスタンへのパイプラインもマラッカ海峡への依存を減らす パキスタン、イランとオマーンは昔から特別な関係

ニカラグア運河                 

北極海 極東とヨーロッパをスエズ運河より2週間短縮 東アジアと北米東海岸パナマ運河より1万㎞短縮、資源

北極圏 地球温暖化に伴い人口増加 赤道付近の国からの集団移住、国際管理された農業関連産業?

海運業と保険業がグローバリゼーションの基盤を築いた 国家より物流を重視する無国籍企業

 

国家から結節点へ

ドバイ 世界のホーム 国籍が意味を持たない 世界中のあらゆる場所との円滑なつながりを誇る都市

 永続的な一時滞在という矛盾した外国人 UAE人が名目上の存在、保護されるべき珍種のような存在

 グローバルな住民と経済力が極端なかたちで混じり合う実験室

サウジアラビア キング・アブトゥラー経済都市KAEC 民間建設による200万人以上の完全一体型都市

バブ・エル・マンデブ海峡に54㎞の橋建設計画

ラゴス アフリカのグローバル都市 多民族国家、12の周辺諸国の中心

 

ポップアップ都市 資本主義勢力が効率的に管理する特別な経済区SEZ 中国、インド、モーリシャス

エンクレーヴ(自国領内の飛び地)ではなくエクスクレーヴ(他国内にある自国の飛び地)

サプライチェーンへのアクセスが重要                                       

国自体が差別待遇のない投資対象国 なんでもそろう効率的で特別な国になるように努力 スロヴェニア,香港,シンガポール

都市化の進行は、人々が都市に集まっていることは意味しても、都市の側にその準備ができていることを意味しない

サプライチェーンの建設を優先することで、結局はよりよい政治体制を築ける

サプライチェーン 底辺への競争を加速させる存在 → 頂点に上り詰める手段

より好ましいサプライチェーンを届けることが、悪質なサプライチェーンに搾取されることを防ぐ唯一の方法

需要と供給が支配する世界では、競争力の強化と汚職の抑制を同時に実現できるかもしれない 資源、海賊、動物保護

グローバルな流動性を活用して金融サプライチェーンをさらに拡大し、企業やインフラ等の価値創造資産と資本を結びつける必要

巨大都市は、人が絶え間なく移動する新陳代謝の激しい環境

 ソフトよりハードが優先されるべきだなどとは一瞬たりとも考えてはならない

 中国はインフラを整備して複数のクラスターにつくりかえ富裕層はゲーテッド・コミュニティに住む

カラカス、カラチ、マニラ、ジャカルタラゴス、カイロ

 巨大な引力で拡大し、無法地帯化し、基本的公共サービスの提供がさらに困難になる

グローバル社会へ向けて

サイバー文明 ウォルマートの開店は阻止できてもアマゾンの脅威にはなすすべがない

インターネット空間は、参加者が決めた以外のルールでは存在しない バルカン化 ボーダレスなパラレル空間ではない

 国家システムのなかで形成されたサプライチェーンがボーダレス化しているのに対し、誕生時にボーダレスだったインターネットは国家という罠に絡め取られている

IoT インターネット Of Threats

物理的な場所とバーチャルな場所の比重が変化 政府によるメディア、主張、アイデンティティの独占は消滅

接続性を構築した個人は、現実にいる場所とは別の場所に属したり、複数の場所に忠誠心を持ったりすることができる

つながりを持つ数十億人が直接取引を行うための市場 垂直な依存関係から水平な相互依存関係へ

 シェリング・エコノミーと呼ぶよりも、自己制御力を持つピアツーピア資本主義が完全に開花した姿

 ロボットやアルゴリズムが労働の自動化を促進するほど経済的な安定を得るために相互依存を強める

 

希釈化 都市化と移民 グローバル都市は新しい複数の民族混合的なグローバル文明を培養 文化的遠心力

中国はむしろ漢族の拡散により少数民族を希釈化 本国では均一化し、国境の外では混じり合っている

国家を超越して自らを世界市民と呼ぶ専門家が世界中を活発に移動し地球レベルの課題に全力で取り組む

需給関係が支配する世界では、取引はさらに増え、愛国心は移動するのではなく、分割し、増加する

 

自然の複雑さに敬意を払う

川は分離するよりも、むしろつなげる存在

水の脱塩、輸送、リサイクルは、重要な意味

先住民の発するメッセージは歴史の流れに沿ったもの 都市への食糧、水その他資源の過剰供給は自らの首を絞める

より持続可能な方法で都市化が進行すれば、自然に還すプロセスを開始することも可能

デジタル労働に従事しつつ、自然のそばで生活するという選択肢 急激な都市化と田園生活への志向のバランス

 

接続性から柔軟性へ

われわれがよりボーダレスな世界を必要としているのは、

破壊的な領土紛争にこれ以上耐えられないから、

人間と資源の配置を最適化すれば人的、経済的なポテンシャルが大きく増大するから、

国民に十分な福祉政策を提供できる国が非常に少ないから、

そして数十億人がいまだにグローバリゼーションの恩恵に浴していないから。

危機や不確実性という問題に対する解決策を提供するのは国境ではなく、より多くのつながり

ボーダレスな世界から利益を享受したければ、まずそれを構築する必要がある。