読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

善と悪の経済学 Economics of good and evil トーマス・セドラチェク 

63経済書

チェコの経済アドバイザー。

合理性を基礎とする経済学に対し歴史的考察により疑問を呈する。読み物として面白い。

主張としては、すでに十分に持っていることに気づこう。ゴドーを待ちながら。政策としてはGDP最大化ではなく債務最小化を目標とする。

合理性を中基礎据える近代経済学の祖とされるスミスは倫理の観点の考察に苦心していた。触れられてはいないがケインズが財政政策は機械的な発動ができなにことが課題だと看破していたのに、どちらも承継者とされる人には都合良い部分だけに商店が当てられてしまったことが興味深い。

数学がトートロジーなので、数学を中心にして理論家されていってしまった経済学もトートロジーが多く、理論に意味が無い。 

三人客がいる場合に二杯のビールをどのように渡すか。液体だから三杯にすればいいじゃないか、と思ってしまうので、例としては・・・。

神話、宗教、神学、哲学、科学の中に経済学を探す

労働 城壁建設には感情のない人民こそ理想

都市に城壁 自然状態から解放され自然から遠ざかる 自然は資源の供給元

自然と社会を交換 分業と富の蓄積 利益や利得のためだけではない結びつき

人間が望むことは、欲求を満たすことではなく、もっと欲しがること

循環史観

 

旧約聖書

反禁欲的 法律と所有財産の尊重、社会的セーフティネットの整備

進歩の観念と時間を線と捉える感覚により人生には意味が与えられることになった

地上の楽園の追求=経済学

善と悪、その報いとして受け取る効用の関係

景気循環を倫理的に説明

安息日 生産性の最大化は許されていない

貨幣 信用としての抽象的概念 時間軸→金利

効用と快楽の間で幸福な妥協

 

古代ギリシャ

善も悪も人間に由来 野生は悪の宿るところではない

ヘシオドス 神はプロメテウスの行為に対する罰として資源を希少にした 効率的な分配の必要 労働は人間に定められた運命

タレス 哲学は世の中の現実に広く影響を与えうる 哲学は学問の女王

クセノポン 現実の世界を分析 アテナイの国富を最大化 貿易は公共の利益に資する 使用価値と交換価値の根本的なちがいを理解 

プラトン ①どのような問いを発してどのように答えるか ②世界を抽象化

 肉体の欲求を尊重しない 禁欲主義 需要サイドを絶つ 

 労働は奴隷のやること 供給サイドも断つ

人間が生きているのは影の世界 イデア 合理主義 知的かつ精神的な瞑想や自己認識の中で真理に到達する手がかりを得るのが理想

アリストテレス 現世 善の最大化 善は効用の最大化ではなく節度 過剰と不足は悪の、中庸が徳の特徴となる エウダイモニア=幸福こそ最も美しく、善く、快いもの

ストア派 効用と善は無関係 行為の倫理性 結果は運にゆだねるべきもの 法律を絶対 効用に意味はない 依存するものが少ないほど自由 肉体の欲求から自由になる スミスはストア派を自認

エピクロス派 効用と快楽を最大化 善=効用(結果)

 

キリスト教

キリスト教の基本メッセージは経済用語を使って解釈すれば理解しやすい

経済は社会の基本構造の一部とみなされ、それ自体は信仰の対象外?

原罪=消費の罪 消費する権利も必要もないものを消費した

贖罪 奴隷を買戻し解放する 負債の免除、罪の恩赦 積極的な不公平 善悪の計算を放棄

ある種のものは買うことはできず、与えられなければならない

悪行が利益に、善意が悪に転換される論理

 

デカルトと機械論>

科学の基礎を築こうと苦闘

 

<バーナンド・マンデヴィル> 蜂の寓話 私悪すなわち公益 悪徳

強欲は社会の進歩に必要な条件 進歩を実現する唯一の道はとにかく需要を増やすこと 個人の悪は公益に資する 市場は人間の悪徳を公益に帰る転換装置

 

アダム・スミス> 経済学の父

社会的行動の原理は共感 共感は社会を結びつける役割を果たす 倫理

倫理の重要性を説いたが、市場の見えざる手、利己的自己中心的ホモ・エコノミクスを説いたものと理解されてしまった

  

経済学のなかに神話、宗教、神学、哲学、科学を探す

<強欲の必要性 欲望の歴史>

パンドラ・エデン 神の呪い

①労働が楽しかった時代を覚えている

②悪をこの世にもたらしたのは欲望、好奇心、つまり人間のよからぬ性質

③神は人間に直接に呪いをかけたわけではない 人間が自ら不幸を選ぶように仕向けた

スミスは人間の強欲が意味するものを追求しているうちに経済学の領域に踏み込んだ

労働は人間の本源的な衝動→労働は呪わしい(創世記)、疎ましいギルガメシュ→魂(アウグスティヌス→消費

物質的、精神的な貪欲は人間の基本的な特徴

供給は需要を満たすのではなく新たな需要を喚起する

トートロジー 効用の最大化 効用(満足、快楽)の最大化をしない消費があるのか 反証不可能

 

<進歩>

時間は循環的だと考えられていたが、ヘブライ人が直線的時間の概念を導入し、キリスト教徒がめざすべき理想を定め、古典派経済学者が進歩を宗教から切り離した

消費に関して幸福になる道 永久に消費し続ける

←十分持っていると気づく「ゴドーを待ちながら」言ってごらん、ほんとでなくても。わたしはしあわせだ。しあわせになったところで、何をしよう?ゴドーを待つのさ。

ユダヤの律法 最大化という命題の対極

安息日 人間の本性は働き続けるので、強制的に仕事の成果を楽しまなければならない

一定の年月が過ぎれば債務は帳消し 富の蓄積は失効

しかし技術の進歩によって得られた時間の節約が、すべて生産に投じられている

不況期のためにとっておくべき財政赤字を好況期に食べてしまっている 余剰があるから不足を凌げる。新ヨセフのルール。GDPの最大化ではなく、債務の最小化が経済政策の目標となるべき

 下り坂でスピードが出たらブレーキを踏み、電気自動車のようにその分エネルギーを回収する

 

<善悪>善は報われるか

 

ヘブライ人は善悪こそが歴史の決定要因

ストア派は善の見返りを計算してはならない

エピクロス派は結果として報われればそれが善

キリスト教は神の慈悲を導入し善も悪も来世で報われる

マンデヴィル、スミスが私悪は公益

ベンサム功利主義

 

<見えざる手 ホモ・エコノミクス

役割①個人の悪を公の善に変える ②経済と社会の基本構造を結びつける カオスから秩序を生み出す

生来の利己心、善悪も役に立つ ヘブライでは善の従属 キリストでは同一次元

誰も望まなかったにもかかわらず生じた悪=罪 生け贄をささげることで対処

 キリストが自ら生け贄となり永遠に果たされた

 分業では罪の分担が悩ましく、しかも事後にならないとわからない 公害など

ダーウィン主義の社会への適用が社会ダーウィン主義だがダーウィンは社会的プロセスを生物学に応用

 スペンサー(適者生存)が社会ダーウィン主義者なのではなく、ダーウィンが生物スペンサー主義者

 トートロジー 生き残っているものは常に最適者

 

<アニマルスピリット>

何の理由もなく人を刺激し、行動に駆り立てる何か 人間の不合理で予測不可能な部分 英雄の元型

恥ずかしさを隠すための葉が初めて所有した外部財

隠したい、所有したい、自分の身を守りたい、という願望は、自由の喪失とモノ依存に結びつく

人間の欲望に自然なもの、自然発生的なものはない。何を欲しいかを教えられる。

動物に打ち負かされる、ロボットに打ち負かされる。どちらも無関心、無感動が戦う相手。

人間の位置は、合理的なホモ・エコノミクスとアニマルスピリットの間にある。

 

<メタ数学>

経済学が機械的な分配の学問になった 現実の世界には社会的な相互作用があるにもかかわらず数式でうまく説明できると考えるようになった

数学で最適な価格設定をすることにより計画経済は計画を立て経済を支配する手段とみなしたが、自由市場経済の方も必要とした

しかし最適な人間の行動を設計できなかった

数学は必要だが十分ではない 真実は数学より大きい 数学は普遍だが不変ではない

数学がエレガントでパーフェクトなのはそうなるように考案されたから 数学はトートロジー

決定論の立場では、ランダム性や偶然を理解するのはむずかしい 力学は量子力学によって決定論が弱められたが、経済学は世界を方程式の集合体として表現し、世界の動きを記述できると信じている

経済学が数学を援用するからといって、経済学が科学だということにはならない

 

<真理の探究>

経済学は規範的な学問なのか、実証的な学問なのか 学問から神話を取り除く努力

仮説は世界について考える手段、世界を観察する手段にすぎない

 しかし経済学の仮説は非現実的だが、真理を語っていると信じられている

モデル 何かのイメージ 経済的現実を具現化するためには、モデルに似せて経済を構築するのか、現実に似せてモデルを構築するのか

感覚的インスピレーションはエンジン、理性はブレーキ

 感情の領域にあったやわらかいものを合理的思考へと固めるプロセス

社会学者、法学者、心理学者、哲学者は、未来を予想しようとはしない。洞察を示すにとどまっている。経済学者は、何の予知能力も持ち合わせてないことを露呈し、危機の発生も規模も見通すことができなかったにもかかわらず、将来予測に熱心。物理学は生命のないものを相手にしているので将来のことを予想しやすい 万有引力相対性理論に道を譲った

予言はなされたがためにそれを引き起すこともあれば、食い止めることもある

 未来は神にとってさえ定まっていない アルフレッド・ホワイトヘッド

 旧約聖書の予言者は、未来を決定論的に預言したのではなく、警告を発して戦略的選択肢を提示した

セテリス・パリバス 他の条件が等しければ 他の条件が一定ならば

価格がどうなるのかあらかじめわかっていたら、そもそも市場は存在しない

 しかし未来について考えることは人生において欠かせない

理性と感情の二元論を放棄して、互いに相手を必要とし、相手を補い合う統合的、連続的系はあるのか?

理性はハード化された感情

言葉は主観的な感情を既存の最も近い表現に言語的四捨五入したもの

 主観的経験が言葉という抽象的で客観的なものに変えられる

時計を見て、短針と長針の位置を予測する理論は拵えられるが、ゼンマイや歯車の関係を説明する理論が選ばれるかは疑わしい

健康なときは名医と藪医者のちがいはないが、危機になって初めてよい医者は見分けがつく

 経済学は危機の際に役立たなかった 危機になれば真実が現れる 王様は裸!

チェスで重要なことが起きるのはチェス盤の外

経済学者は現実世界を忘れモデルを使って理論を展開する一方、現実の経験に基づいて経済理論を論じる必要がある 二重の悩み

 

<<経済学>>

かつて経済学は家計を管理するための知識

経済学はすべてを説明する、という壮大な野望を掲げた以上、狭い学問領域を飛び出してすべてを理解しようと本気で努力しなければならない 経済学者はより広い社会的責任を果たさなければならない

ただの経済学者にすぎない人は、けっしてよい経済学者にはなれない

市場経済が機能するかどうか、ではなく、望み通りに機能するのか、ということが問題

私たちはすでに満たされている

物質的希少性という見方をやめ、経済的ゆたかさという新しい時代を目覚めさせる ロバート・ネルソン

経済学は肉体と魂の両方を持つべき ハードはソフトを殺してきた 鍛冶屋のカインはそよ風のアベルを殺した

居酒屋に客が三人いるのにビールが二杯しかない状況

 富をどのように分配するか 哲学(権利とは)、倫理学(公平とは)、社会学(社会的地位はどんな権利を生むか)、心理学(どう行動するか)

 三杯目のビールが出現した瞬間に万事解決+正義の問題が掻き消える=経済成長を象徴

 ゼロ成長 資本主義も民主主義も成長がなくとも存在しうる